「地元の人しか使わない」交通・生活インフラ体験 ─ 岐阜県編
石畳の向こうへ。
馬籠から妻籠、
暮らしの道を歩く。
江戸と京を結んだ中山道・木曽路。その岐阜県側の入口には、路線バスが今も住民の足として走り、 峠の茶屋では無料のお茶が振る舞われ、荷物は「次の宿場」まで軽トラで運ばれていく── 観光のためではなく、暮らしのために続いてきた仕組みをそのまま借りて歩く、一泊二日の巡礼旅。 この記事の通りになぞれば、そのまま歩けます。
なぜ、欧米豪の旅人はこの峠を歩くのか
中津川駅前のバス乗り場に朝立ってみると、不思議な光景に出会います。通学の高校生に混じって、 大きなバックパックを背負った欧米からの旅行者が、地元の人と同じように整理券を取り、 同じように小銭を数えながら路線バスに乗り込んでいく。行き先は「馬籠(まごめ)」。 木曽路十一宿の最南端、島崎藤村『夜明け前』の舞台となった坂の宿場町です。
海外のガイドブックやトレッキングメディアでは、馬籠〜妻籠(つまご)間の旧中山道は “Nakasendo Trail” あるいは “Samurai Trail” として紹介され、 熊野古道と並ぶ「日本で歩くべき古道」として静かな人気を保ち続けています。 理由は明快で、①舗装路ではなく本物の峠道が残っている ②両端に江戸期の宿場町がある ③公共交通・荷物運搬・茶屋接待という「歩く人を支えるインフラ」が生活の延長として機能している── この三拍子が、日帰り圏でそろう場所が世界的にも稀だからです。
本記事はこの道を、観光バスではなく地元の生活インフラだけを乗り継いで踏破するための完全ガイドです。 北恵那交通の路線バス、南木曽町の地域バス「新交通システム」、観光案内所の荷物運搬便、 峠の無料お茶接待、そして寄り道編としてローカル私鉄・明知鉄道。 すべて実在の時刻・料金・電話番号ベースで組んでいます(2026年時点・巻末に確認先一覧あり)。
全体図と行程の組み立て方
3つの歩き方──体力と時間で選ぶ
| プラン | 区間 | 徒歩距離 | 歩行時間 | こんな人に |
|---|---|---|---|---|
| A. 定番 | 中津川駅→バス→馬籠→徒歩→妻籠→バス→南木曽駅 | 8.2 km | 2.5〜3.5h | 初めての人・海外旅行者の9割はこれ。下り基調で歩ける |
| B. 健脚 | 中津川駅→徒歩→落合宿→石畳→馬籠→徒歩→妻籠 | 約17 km | 6〜7h | 「江戸の一日」を体感したい人。落合の石畳が白眉 |
| C. 気楽 | 馬籠→徒歩→馬籠峠→バス→妻籠 | 2.1 km | 約1h | 峠の雰囲気だけ味わいたい人・子連れ。峠からバスで下る |
- 馬籠→妻籠(北行き)が定石。馬籠(標高約600m)から峠(801m)までの登りが約200m、妻籠(約420m)への下りが約380m。登り少なめ・下り多めで楽。
- 逆走(妻籠→馬籠)は登りがきつい代わりに、午後の光で馬籠の石畳と恵那山を望むフィナーレになる。写真派はこちら。
- 本記事は定石の北行きで構成する。
準備編──荷物は「先回り」させる
この道が世界の徒歩旅行者に愛される最大の理由が、手荷物運搬サービスです。 朝、馬籠の観光案内所にスーツケースを預けると、昼過ぎには峠の向こうの妻籠観光案内所に届いている。 仕組みは至ってシンプルで、地元のスタッフが車で峠道(県道)を運ぶだけ。 しかしこの「荷物だけ先に宿場入りする」体験こそ、江戸期の旅で人足や馬が担った機能の現代版です。
| サービス | 区間・場所 | 料金 | 受付/時間 |
|---|---|---|---|
| 馬籠⇔妻籠 運搬便 | 馬籠観光案内所・馬籠宿BASE ⇔ 妻籠観光案内所 | ¥1,000/個 | 受付 8:30–11:30/当日13:00–17:00に受取。 実施期間 3/20〜11/30 |
| 同・臨時便 | 受付時間外(11:30–17:00)や冬期(12/1–3/19) | ¥4,500〜/回 | 荷物3個まで。南木曽町観光協会へ要相談 |
| Walk Lite Nakasendo (木曽路手荷物運送) | 宿→次の宿、中津川市観光案内所→宿など。 対応エリア:中津川駅周辺〜松本(木曽路全域) | ¥2,000〜/個 | メール申込(氏名・希望日・区間・個数)。数日歩き継ぐ縦走派の定番 |
| 荷物一時預かり(中津川) | 中津川市観光案内所(駅横・にぎわいプラザ1階) | ¥700/個 (2時間以内¥500) | 9:00–17:00 |
| 荷物一時預かり(馬籠) | 馬籠観光案内所/馬籠宿BASE(下入口バス停横) | ¥500/個 | 8:30–16:30(超過すると当日返却不可の場合あり) |
熊鈴は「借りる」のが地元流
馬籠峠一帯はツキノワグマの生息域です。地元はそれを前提に暮らしており、 登山道の各所に「熊よけの鐘」が常設されています(見つけたら遠慮なく鳴らしてよい、というより鳴らすのがマナー)。 さらに馬籠観光案内所と妻籠観光案内所では熊鈴の無料貸し出しを実施。 どちらで借りてどちらで返してもOKという、峠を挟んだ二つの町の連携がそのまま制度になっています。 気に入ったら妻籠観光案内所で同じ鈴を購入もできます(¥2,000)。
季節と装備
| 季節 | 状態 | メモ |
|---|---|---|
| 4月中旬–5月 | ◎ ベスト | 新緑と枝垂れ桜。ミツバツツジは南木曽の名物 |
| 6月–9月 | ○ | 杉木立で日陰は多いが蒸す。雨後の石畳は非常に滑る |
| 10月–11月下旬 | ◎ ベスト | 紅葉。運搬便の実施は11/30まで |
| 12月–3月 | △ 上級者向け | 初雪は例年12月中旬〜。峠は積雪・凍結。運搬便は臨時便のみ |
- 時刻・料金は必ず最新を確認。本記事の数字は2026年7月時点の公開情報に基づく目安。特にバスは2025年10月に路線再編があったばかりで流動的。
- 運搬便の受付は午前11:30まで。これを過ぎると荷物は峠を越えられない(臨時便¥4,500〜)。朝イチで馬籠入りが鉄則。
- 峠区間にコンビニ・売店・自販機はない。トイレは新茶屋・峠の清水・一石栃・大妻籠などに公衆トイレあり。
起点・中津川駅──通学バスに乗って宿場へ
旅は名古屋から始めるのが定石です。JR中央本線・特急「しなの」で約50分、 快速でも約1時間15分で中津川駅へ(普通運賃¥1,340+特急利用時は特急券)。 東京からは新幹線で名古屋乗り換え、または「しなの」で長野側・塩尻経由も可。
改札を出て左、「にぎわいプラザ」前が路線バス乗り場です。ここから乗るのが 北恵那(きたえな)交通・馬籠線。名鉄グループの地場バス会社で、 朝の便は神坂(みさか)地区へ帰る住民や通学生の生活便を兼ねています。 車内は整理券方式・運賃後払い。中津川駅前→馬籠は約25分・¥800 (2025年3月の改定で570円から値上げ)。交通系ICが使えない便もあるため小銭の用意を。
| 中津川駅前 発 → 馬籠 着 | 馬籠 発 → 中津川駅前 着(帰路参考) |
|---|---|
| 07:42 → 08:07 | 07:00 → 07:25 |
| 09:10 → 09:35 | 08:45 → 09:10 |
| 09:55 → 10:20 | 09:45 → 10:10 |
| 10:45 → 11:10 | 10:30 → 10:55 |
| 11:15 → 11:40 ほか終日運行 | 11:20 → 11:45 ほか終日運行 |
- 推奨は9:10発。9:35馬籠着→荷物を預け(受付11:30まで余裕)→宿場散策1時間→11時前に峠へ出発、が黄金律。
- 健脚Bプランで落合宿にも寄るなら、「馬籠線フリー切符」大人¥1,300(webチケット CentX/RYDE PASSのみ販売・車内購入不可)が便利。落合で途中下車→石畳だけ歩いて再乗車、という「いいとこ取り」もできる。
- バスを逃したらタクシー:中津川駅→馬籠 目安¥3,500〜・約20分(恵那タクシーほか)。
出発前の腹ごしらえ──栗きんとん発祥の町
中津川は栗きんとん発祥の地。駅前ロータリー周辺に老舗「すや」「川上屋」の本店・支店が揃い、 秋(9月〜)なら出来たての栗きんとんを1個から買えます。バス待ちの15分で買える距離感なので、 峠の行動食として2〜3個(1個¥300前後)仕込んでいくのが地元通の歩き方。 駅横「にぎわい特産館」では市内和菓子店の栗きんとん食べ比べセットも扱います。
健脚コース──落合宿と、江戸が残した840mの石畳
時間と脚に余裕があるなら、中津川からバスに乗らず歩き始めてください。 中津川宿の枡形(ますがた・敵の侵入を防ぐ鉤型の道)を抜け、旧道をたどって約1時間で落合宿。 映画『十三人の刺客』で決戦の地として描かれた宿場で、本陣は門・建物・庭が往時のまま残る、 中山道でも貴重な存在です(内部公開日は限定・外観見学は自由)。
落合宿を出て国道を横切ると、いよいよこのコース前半のハイライト、「落合の石畳」約840mが始まります。 国指定史跡。江戸時代の石がそのまま残る区間を含む、中山道で最長級の現存石畳です。 薄暗い檜林の中、苔むした石の上を登っていくと、雨の日に旅人が滑らぬよう石を敷き詰めた 幕府の道普請(みちぶしん)がいかに実用的な「公共事業」だったかが足裏から伝わってきます。
石畳を登り切った先の「新茶屋」集落に、島崎藤村の筆による 「是より北 木曽路」の碑が立ちます。ここが美濃と木曽の境、旅の気分が切り替わる結界です。 新茶屋には公衆トイレと無料Wi-Fiスポットがあり、馬籠宿まではあと約30分の登り。
馬籠宿──坂に生きる宿場、藤村の故郷
バスを降りると、目の前が宿場の下入口。馬籠宿は山の斜面に張り付いた全長約600mの坂の町で、 石畳の両側に格子造りの家々、水路、水車が連なります。明治・大正の大火でほぼ焼失した後、 住民が石畳と町並みを復元した「暮らしながら守る」宿場です。
坂の中腹、本陣跡に建つのが藤村記念館。馬籠は『夜明け前』の島崎藤村の生家であり、 小説の書き出し「木曽路はすべて山の中である」はまさにこの地のこと。 峠へ向かう前に30分だけでも寄る価値があります。坂を登り切った陣場の展望台からは、 正面に恵那山(2,191m)の雄大な山容。ここが「これから歩く峠」との対面の場所です。
峠前の補給
宿場内には五平餅(くるみ味噌ダレ・1本¥300前後)、焼きたて煎餅、おやきの店が点在。 昼をしっかり取るなら蕎麦屋が数軒ありますが、峠越えに出る前に必ず水分を購入してください。 この先、妻籠まで商店・自販機はほぼありません(一石栃はお茶接待のみ)。
- ① バス停横の馬籠宿BASEまたは坂の途中の馬籠観光案内所で荷物を預ける(運搬便¥1,000・受付11:30まで/TEL 0573-69-2336)。
- ② 同じ窓口で熊鈴を無料レンタル。「妻籠で返します」の一言でOK。
- ③ トイレを済ませ、水500mlを確保。
- ④ 案内所で「妻籠⇔馬籠ハイキング券」をもらっておくと、妻籠で檜の完歩証明書が半額(¥150)になる(宿泊者向け配布。詳細は窓口で確認)。
核心部・馬籠峠越え 8.2km 実況ガイド
区間実況──立て札と鐘を目印に
- 0.0km馬籠宿 上入口(高札場)宿場の坂を登り切った所から旧道へ。石畳→舗装→土道を繰り返しながら県道と絡んで登る。道標は「妻籠宿 Tsumago」表記で完備、迷う要素はほぼない。
- 0.8km上陣場・十返舎一九碑『続膝栗毛』の一九が詠んだ碑と恵那山の展望。振り返る馬籠宿が絵になる、序盤のご褒美ポイント。
- 2.1km馬籠峠(801m)・県境岐阜県中津川市から長野県南木曽町へ。正岡子規の句碑と「馬籠峠」の標柱。かつての峠の茶屋(営業日限定)の前がバス停「馬籠峠」──ここで脚を売り切った場合は地域バスにエスケープ可(後述)。
- 2.6km峠集落・清水のトイレ車道を離れ、いよいよ杉と檜の美林の中の下り道へ。「峠の清水」に公衆トイレと無料Wi-Fi。熊よけの鐘が随所に現れる──通過のたびにひとつ鳴らす。
- 3.6km一石栃(いちこくとち)立場茶屋この道の心臓部。樹齢300年の枝垂れ桜が立つ江戸期の茶屋建築で、地元ボランティアが囲炉裏を焚き、歩く人全員に無料でお茶を振る舞う(寸志歓迎)。世界中のハイカーの記帳ノートは圧巻。一帯は白木改番所跡=木曽檜の「盗伐取締り」の関所でもあった。
- 5.5km男滝・女滝(おだき・めだき)吉川英治『宮本武蔵』の舞台となった二筋の滝。本道から往復10分の寄り道。滝前の石畳は濡れて滑りやすい。
- 6.4km大妻籠(おおつまご)出梁(だしばり)造りの民宿が数軒並ぶ静かな集落。ここに泊まって囲炉裏の夕食を囲むのが「通」の宿泊。庚申塚や石仏群が続き、往時の石畳の残存区間も。
- 8.2km妻籠宿 到着高札場から宿場へ。観光案内所で熊鈴を返却し、荷物を受け取り(13:00–17:00)、完歩証明書を受け取る。
エスケープ路線──南木曽町「新交通システム」地域バス
この峠道のすごさは、登山道とほぼ並走して町営の地域バス(馬籠線)が走っていることです。 馬籠〜馬籠峠〜一石〜妻籠〜南木曽駅を結び、住民の通院・買い物の足でありながら、 ハイカーの「保険」としても完全に機能します。雨・疲労・時間切れ、どの時点でも離脱できる古道は世界的にも稀です。
| 区間 | 大人 | 小人 |
|---|---|---|
| 南木曽駅 〜 馬籠峠・馬籠 | ¥800 | ¥400 |
| 妻籠 〜 馬籠峠・馬籠 | ¥600 | ¥300 |
| 馬籠峠 〜 馬籠/南木曽駅 〜 一石 | ¥300 | ¥100 |
- 本数は1日数本(馬籠発は日中10時台〜17時台に4本程度の日が目安)。歩き始める前にバス停の時刻を撮影しておくこと。
- 乗車券は妻籠観光案内所で事前購入可(¥300券・¥600券、キャッシュレス対応)。モバイルチケット「QUICK TRIP」でも購入できる。
- 季節運行の濃飛バス 馬籠・妻籠線(馬籠発 10:45/15:25 妻籠行など)が走る日もあり、実質の選択肢はさらに増える。
妻籠宿と、檜の完歩証明書
峠を下り切って着く妻籠宿は、日本で最初(1976年)に重要伝統的建造物群保存地区に選定された宿場。 高度成長期、全国が古い町並みを壊していた時代に、住民が 「売らない・貸さない・こわさない」の三原則を決議して町を守った、町並み保存運動の聖地です。 脇本陣奥谷(国重文・囲炉裏に差す冬の光線で有名)、枡形の道、寺下の町並み── 電線を排し看板を抑えた景観は、馬籠より一段「暗く、深い」江戸です。
観光案内所(TEL 0264-57-3123)では、檜製の「完歩証明書」を¥300で発行。 馬籠・妻籠の宿泊者は「ハイキング券」との引き換えで半額の¥150になります。 木曽檜の香りが残る札に日付が入る、この道ならではの巡礼の証です。あわせて熊鈴の返却も忘れずに。
帰路と宿──妻籠線バスと、囲炉裏の民宿
妻籠→南木曽駅(帰る場合)
妻籠宿からJR南木曽(なぎそ)駅へは約3km。 2025年10月のダイヤ再編で地域バス「妻籠線」(南木曽駅〜妻籠・¥300)が新設され、増便されました。 北恵那交通の坂下線も坂下駅前〜妻籠〜南木曽駅へ延伸しており、 岐阜側・長野側双方の生活路線が妻籠で結節するかたちです。 南木曽駅からは中央本線で中津川へ約15分(特急しなの一部停車)、名古屋方面へ戻れます。 体力が残っていれば、妻籠→南木曽駅を旧中山道でそのまま歩き、 木曽川に架かる大吊橋「桃介橋」(大正期・電源開発の遺産)をゴールにする延長戦も見事です(+約1時間)。
泊まるなら──「一泊二食・囲炉裏端」という文化財
この旅の完成形は、馬籠・大妻籠・妻籠の木造民宿に泊まることです。 多くが江戸〜明治の建物で、夕食は囲炉裏端で川魚・山菜・蕎麦、相部屋文化の名残で他の旅人との会話が生まれる── 欧米豪のハイカーがこの道を「人生の旅」と呼ぶ理由の半分は、この宿泊体験にあります。 予約は各観光協会サイト経由か電話(巻末)。大妻籠の宿は数が少なく、桜・紅葉期は数ヶ月前に埋まるのでご注意を。
- 12月中旬以降、峠は積雪・凍結が普通にある。軽アイゼン携行、日没(16:30頃)前の下山厳守。
- 手荷物運搬の定期便は11/30で終了。冬期は臨時便(¥4,500〜)か、Walk Lite Nakasendo(通年・要予約)を使う。
- 静寂と雪の宿場は冬だけの絶景。難易度と引き換えの価値は十分ある。
明知鉄道──日本一の急勾配を、寒天と山菜が走る
二日目、まっすぐ帰るのはもったいない。中津川の隣駅・恵那駅から出る第三セクター 明知鉄道(あけてつ)・明知線は、岐阜県の「地元の人しか使わない交通」の生きた教科書です。 恵那〜明智25.1kmを1〜2両のディーゼルカーがとことこ走り、乗客の主役は通学の高校生と通院のお年寄り。 そこに全国から鉄道ファンと食いしん坊が混ざります。
名物は二つ。ひとつは飯沼(いいぬま)駅──33‰(パーミル)、日本一の急勾配上にある駅です。 1kmで33m登る坂の途中にホームがある。国の基準値の6倍という立地は、 「それでも地元に駅が欲しい」という平成初期の住民運動の産物で、まさに生活インフラの執念の形。 もうひとつが食堂車(グルメ列車)。ふだんの営業列車に食堂車両を連結し、 沿線のお母さんたちが作る料理を、車窓の農村風景とともに供します。
| 列車 | 時期 | 料金(大人) | 内容 |
|---|---|---|---|
| きのこ列車 | 9月〜11月(火〜日) | ¥6,000 | 地物きのこ尽くし。毎年予約困難の看板列車 |
| じねんじょ列車 | 12月〜3月(火〜日) | ¥5,000 | 恵那名物・自然薯のとろろ膳 |
| 冷酒列車 | 夏の土曜 | ¥5,000 | 地酒の冷酒+特製弁当 |
| 枡酒列車 | 1月〜3月の土曜 | ¥5,500 | 枡酒で車内宴会 |
| 急行「大正ロマン号」 | 通年(月曜運休) | 乗車券のみ可 | 食堂車連結の定期急行。食事は5日前15時までに予約 |
終点手前の岩村駅で途中下車を。女城主の城・岩村城の城下町は、 NHK朝ドラ『半分、青い。』のロケ地となった重伝建の商家町で、 名物「カステーラ」と五平餅の食べ歩きが楽しい。恵那駅〜明智駅は約50分、 1日フリー切符や「鉄印帳」(全国の三セク鉄道を巡る御朱印の鉄道版)の起点としても人気です。
モデルプラン──1泊2日・完全トレース版
Day 1 名古屋 → 馬籠 → 峠越え → 妻籠(泊)
- 08:00名古屋駅 発JR中央本線 特急しなの(約50分・¥1,340+特急券)または快速(約75分)。
- 09:10中津川駅前 発(北恵那バス馬籠線)駅横にぎわいプラザ前乗り場。¥800・小銭準備。栗きんとんは乗車前に確保。
- 09:35馬籠 着 → 荷物を預ける馬籠宿BASE/観光案内所で運搬便(¥1,000・受付11:30まで)+熊鈴レンタル。
- 10:00馬籠宿 散策藤村記念館30分、展望台で恵那山、五平餅で燃料補給。水を買う。
- 11:00峠越え 開始(8.2km)上入口から旧道へ。12時前後に馬籠峠(801m)。
- 12:40一石栃立場茶屋囲炉裏のお茶接待でひと息。記帳ノートに一言残す。寸志を忘れずに。
- 13:30男滝・女滝 → 大妻籠滝は往復10分の寄り道。大妻籠の集落と石仏群をゆっくり。
- 14:30妻籠宿 着熊鈴返却・荷物受取(13:00–17:00)・完歩証明書(¥300/宿泊者¥150)。
- 15:00妻籠 観光 → 宿へ脇本陣奥谷・寺下の町並み。夕暮れの宿場は宿泊者だけの独占時間。囲炉裏の夕食。
Day 2 妻籠 → 南木曽 → 恵那 → 明知鉄道
- 08:30朝の妻籠を散歩観光客が来る前の1時間が最も美しい。
- 09:30妻籠 → 南木曽駅地域バス妻籠線(¥300)または旧道徒歩1時間で桃介橋ゴール。
- 10:30南木曽 → 中津川 → 恵那(JR)中央本線で約25分。
- 12:25恵那駅 発 明知鉄道・食堂車きのこ列車/じねんじょ列車(要予約・発車時刻は予約時に案内)。飯沼駅の33‰を体感。
- 14:00岩村 城下町散策カステーラと五平餅。岩村城跡へ登るなら+90分。
- 16:30恵那 → 名古屋中央本線で帰路へ。
費用総額(大人1名・目安)
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| JR 名古屋⇔中津川・恵那 往復 | 約 ¥2,700〜 | 快速利用。特急しなの利用は+特急券 |
| 北恵那バス 中津川駅前→馬籠 | ¥800 | フリー切符¥1,300(落合寄り道時) |
| 手荷物運搬便 馬籠→妻籠 | ¥1,000 | 1個あたり |
| 地域バス 妻籠→南木曽駅 | ¥300 | 2025年新設の妻籠線 |
| 民宿 1泊2食 | 約 ¥10,000〜13,000 | 妻籠・大妻籠の木造民宿 |
| 明知鉄道 食堂車(任意) | ¥5,000〜6,000 | 運賃込みプラン・要予約 |
| 完歩証明書・五平餅・お茶寸志ほか | 約 ¥1,500 | 小銭で |
| 合計 | 約 ¥16,000〜25,000 | 食堂車の有無で変動 |
実用情報・連絡先一覧
| 窓口 | 電話 | 用件 |
|---|---|---|
| 中津川市観光案内所(駅横にぎわいプラザ1F) | 0573-62-2277 | 荷物預かり・観光全般 |
| 馬籠観光案内所 | 0573-69-2336 | 運搬便受付・熊鈴・宿紹介 |
| 馬籠宿BASE(馬籠バス停横) | 0573-64-2750 | 運搬便受付・荷物預かり |
| 妻籠観光案内所 | 0264-57-3123 | 運搬便受取・完歩証明書・バス券販売 |
| 北恵那交通(路線バス) | kitaena.co.jp | 馬籠線時刻・フリー切符(CentX/RYDE PASS) |
| 南木曽町 地域バス予約(不定期路線) | 0264-57-3133 | 南木曽観光タクシー・前日17時まで |
| 明知鉄道 | 0573-54-4101 | 食堂車予約(9:00–17:00)・5日前15時まで |
| Walk Lite Nakasendo(木曽路荷物運送) | メール申込 | walk-lite-n@outlook.com/宿→宿 ¥2,000〜 |
- 本記事の時刻・料金は2026年7月時点の公開情報に基づく目安です。バスダイヤは季節・曜日で変動し、改定も頻繁です。乗車前日に各公式サイトで必ず確認してください。
- 熊の目撃情報がある日は案内所が注意喚起を出します。単独・早朝・夕方の峠歩きでは特に鈴を鳴らして。
- 宿場・古道はすべて住民の生活の場です。私有地・畑への立ち入り、夜間の騒音、ドローンは厳禁。
「木曽路はすべて山の中である」──藤村が書いたこの一文の続きを、脚で読むのがこの旅です。 通学バスに乗り、峠でお茶をよばれ、囲炉裏で眠る。岐阜県の山あいには、 観光用に作られたのではない、暮らしがそのまま旅人を運ぶ仕組みがまだ生きています。 次回は同じ視点で、長野県側──妻籠から先、飯田線の秘境駅群と木曽路の北半分を歩きます。
